『Kindle Oasis』は誰のための電子書籍リーダーなのか

1st Kindle

SONY DSLR-A350(Minolta/Sony AF DT 18–70mm F3.5–5.6 (D)), 40.0 mm, f/8.0, ISO800, 0.02 sec (1/50), +0.7 EV

もちろん買いますが、これ、誰のための端末なんでしょうね?

4月13日に米Amazonから電子書籍専用端末のKindle最上位機種として発表された『Kindle Oasis』はキャンペーン情報なし、3Gモデルを予約しました。

発売は4月27日(日本時間)ですが、すでにIT専門メディアではタッチアンドトライのインプレッションが紹介されています。

他の専門メディアでも商品の特長は主に以下の点が取り上げられています。主なスペックは下表の通りです。

  • Kindle史上で最も薄く、最も軽い
  • アシンメトリー(左右非対称)のボディーで片手持ちしやすい
  • Kindleとしては初めてバッテリー内蔵のカバーが付属(デュアルバッテリー)
  • フロントライトのLEDを増やしスクリーンの明るさの均一化
Kindle Kindle Paperwhite Kindle Voyage Kindle
Oasis
発売時期 2014年9月 2015年6月 2014年9月 2016年4月
価格 8,980円〜 14,280円〜 23,980円〜 35,980円〜
内蔵ライト なし LED4個 LED6個 LED10個
解像度 167ppi 300ppi 300ppi 300ppi
バッテリー 数週間 数週間 数週間 数ヶ月
重量 191g 205g 180g 本体131g
カバー107g
サイズ(mm) H169
W119
D10.2
H169
W117
D9.1
H162
W115
D7.6
H143
W122
最薄 3.4
最厚 8.5

最上位機種としての特長について

特長と言われる点についての印象は以下のとおりです。

薄さも、軽さも限界。確かに最薄3.4mmは卓越した技術なのかもしれませんが既存ユーザの買い替え需要を強く喚起するとは言い難く、新規ユーザーもあえてこのフラグシップモデルよりはエントリモデルを選択するでしょう。

薄くすると持ちにくさの問題が出てきます。そのためKindle Oasisは筐体の片側だけ厚みを持たせつつ幅を広げ、持った方の手に合わせスクリーンが自動で回転する機能を加えたのでしょう。左右非対称なデザインは初代Kindleを想起させます(トップ画像)。

驚異的な軽さ。Paperwhiteから50gも軽くなったVoyage(180g)は驚異的でしたが、Oasisはさらに49gも軽量化されて(131g、WIFI版、本体のみ)います。スマートフォンですら150g程度あります。薄さ同様に軽くし過ぎて、逆にカバーがないと持ちにくいかもしれません。重心の位置も気になります。

ページ移動の物理ボタンを復活させましたが、これはKindle Voyageで採用した圧力センサーの反省かもしれません。不意にページめくりが発生することがあり、逆に反応してくれないこともあります。私の場合、Voyageはスクリーン上でのスワイプ操作で移動しています。

バッテリーの長時間駆動。筐体を小型化したことで駆動時間が犠牲になりましたが、それでも数週間はもちます。バッテリー内蔵カバー(重さ107g)を装着すると駆動時間は数ヶ月に延びますが重量は本体とあわせて240g程度になり、Kindle Keyboard(第3世代Kindle、2010年発売)と同程度の重さになってしまいます。

とはいえ元々カバーを装着しているユーザーにとっては、今回は初めてカバーと一体化したKindle Oasisが一番軽量なのかもしれません。

フロントライトのLEDを60%増やし画面の明るさを均一化するようですが、Kindle VoyageになってPaperwhiteのような色ムラは気にならなくなっていました。

Kindle Oasisの価格は高いのか?

Kindleは安価なデバイスではありません。第2世代端末(2009年発売時の名称『Kindle US & International Wireless』 )は本体が$279、純正カバーが$29.99です。当時の為替レートで本体のみ2万5千円となります。

しかし当時とは状況が全く異なっています。他のプラットフォームやリーダー端末との競争の末、Kindle端末自体は低価格へと向かい、iOS、Android、Windows、MacなどあらゆるOSへと展開したため、高価なリーダー端末の存在意義を考えてみたいと思います。

Kindle Voyageが発売された時、高価な値付けに驚きを持って受け止められました。今回はそのさらに1万円以上高い価格です。盛大にコケる予感がします。

電子ペーパーとフロントライトで目に優しく長時間読書に向いている、機能を読書に限定しているので薄く、軽くすることができるし、読書に集中できるなど存在意義はあると思いますが、ユーザーの手に渡るためにはやはり価格とのバランスが必要になります。

ユーザーが持ち運ぶ優先順位としては、スマートフォン、タブレット端末、電子書籍リーダーの順。AndroidやiPadでもKindleは使うことができ、かつ優先順位が低いデバイスに高額な負担をするかというとなかなか考えにくいです。AmazonにはFire Tabletもありますし。

実機を触れば印象も変わるかもしれませんが、従来機種との比較、今回のスペックと価格のバランスから言うと「買い」となるのでしょうか。

Kindle Oasisに必要なものは何か

VoyageやOasisといった最上級の専用端末に何が求められるのか、否、スマホやタブレットが広く普及してしまった今日におけるリーダー専用端末の存在意義は?

Kindle Oasisの価格はiPad mini 2は34,344円(税込、執筆時点)が購入できる値段です。3G付き、キャンペーン情報なし版ではiPad mini 4が買えてしまいます。

多少ボディが大きく、重たくなっても以下のような機能はいかがでしょうか。

  1. ストレージの容量。相変わらず4GBです。Amazonはクラウドストレージは無制限に使えるから良いだろうと考えているかもしれませんが、読書対象がコミック系中心になると4GBでは辛い。
  2. Audibleとの連携。Kindle Touchまでは音声読み上げ機能(日本語は対象外)があり、Kindle本体にスピーカー、3.5cmイヤフォンジャックもありました。
  3. Bluetooth対応。FCC承認時のテストでは使用された等が確認されており、実装はしている可能性があります。
  4. USBストレージ接続のワイヤレス化。本体のストレージにアクセスするためにはUSBケーブルで有線接続が必要。
  5. 電子ペーパーのカラー化。
  6. 防水対応。お風呂場での読書や公式HPにあるように浜辺やプールサイドでKindleを持った写真が宣伝に使われています。
  7. 紛失防止機能。本体のパスワードも実は簡単に突破できてしまうので、サイトからの登録解除機能に加えリモートワイプ機能も欲しい。

機能とは別ですが、Kindle Oasis購入者には電子書籍購入権(2万円分)のようなキャンペーンがあると嬉しいですね。

あらためてKindle Oasisは買いなのか

上記の通り繰り返しになりますが、既存ユーザーがさらに電子書籍専用端末を追加購入を動機付ける何かは今のところないように思うし、新規ユーザにとっては無印KindleかKindle Paperwhiteで十分でしょう。

コレクションとして購入する一定層、Paperwhiteから最上位機種にアップグレードしようと考えていた層でOasisが発表されてしまったなど、あまり積極的な理由は思い付きません。

Amazonの狙いはどこにあるのでしょうか・・・技術力を示すためのフラグシップ機で実は売れれば売れるほど赤字だったり。iFixitの分解記事が出れば参考になるかもしれません。

27日に到着予定ですので実機レポートは後日お届けしようと思います。