海外のKindle3に関するサイトによると、先週末(米国東部時間9月19日)に、Kindle3でもKindle2/DXと同じ方法でJailBreakが可能となったようです。今後、Kindle3のJailBreak(Hack)についても記事にする予定ですが、Kindle2の経験を踏まえ注意点をまとめておきたいと思います。随時加筆訂正していく予定です。誤った記載があればご指摘いただけますと助かります。
Kindle JailBreak(Hack)とは何か?
米Amazonは、Kindleがユーザにとって安全かつ快適に利用できる環境を維持するために一定の制限を設けています。JailBreak(Hack)はこの制限を無効化することです。海水浴場にたとえれば監視員の目が届く安全な浅瀬から外に出てるようなもので、自由がある一方で相応のリスクを伴います。
Kindle JailBreak(Hack)で何ができるのか?
KindleはUNIX系のプラットフォームで開発されていますのでUNIX系のネットワークやプログラミング等の知識に精通していれば何でもできます。このようなユーザは一部ですが、なかにはKindleに標準実装されているシステムアップデートの方法を利用して簡単にハッキング可能なファイルを配布するユーザが存在します。これらのハッキングツールを使うと、たとえば通常では変更できないスクリーンセーバーやフォントを差し替えることができるようになります。
Kindle JailBreak(Hack)のリスクって何?
制限が外れて自由になる一方でリスクが存在します。保証対象外となるリスク、何が起こるか分からないリスク、そして文鎮化リスク、情報漏洩リスクなどがあります。
メーカー保証対象外となるリスク:購入日から1年間はメーカー保証を受けることができます。JailBreak(Hack)は”ordinary consumer use”には該当しないため保証対象外となる可能性が高いものと思います。詳細はKindle User’s Guideに記載のAgreement、ONE-YEAR LIMITED WARRANTYで確認できます。
なにが起こるかわからない(パルプンテ)リスク:JailBreakして適用可能となる各種ハックは米Amazonが動作保証したものではありませんので出所には注意が必要です。
固まってしまう文鎮化リスク:Kindleは起動時に様々な設定ファイルやプログラムをロードしますが、JailBreak(Hack)してそうしたファイルの扱いを誤ると起動しなくなる可能性があります。こうなるとKindleは置き物にしかなりませんので「文鎮」とか、海外では「レンガ(brick)」と呼んでいます。トリガーは様々ですがKindle2では次のような原因がありました。Kindle3も大きく変わらないと思います。
同一ハックの重複:ハックファイルは通常オリジナル状態に戻せるようにバックアップを取るなどの工夫がされています。しかし、重複インストールすると先のハックで修正した設定ファイルをバックアップしてしまい、元ファイルを消失する場合があります。
ハック同士の競合:異なるハックで同じ設定ファイルを使用する場合、同じファイルをそれぞれがバックアップしようとしますので、一方のハックが適用済みだともう一方はハック済み設定ファイルをバックアップしてしまいます。アンインストールの順番を誤るとオリジナルファイルを消失してしまう可能性があります。
ハックが使用する設定ファイル内で指定するものと異なるファイルを使用:わたしがKindle2で日本語を表示するフォントハックを使用して経験済みです。自分の好みのフォントに変更する際にファイル名称を誤ったために文鎮化しました。
System Software Update:米AmazonはKindleのパフォーマンス改善や機能追加(バージョンアップ)のために無償でファームウェアを提供しています。その方法は、①米Amazonのサイトから自分でダウンロードする方法、②米AmazonがOTA(Over The Airの略)経由でKindleに直接配信される方法があります。いずれにしろ、このアップデートで配信されるファームウェアがKindle内部にどういう修正を加えるかわかりませんので、ハック適用済みファイルが変更されるかもしれません。場合によってはアップデートに失敗し再起動もできなくなる可能性があります。②は、自分の意図に反して配信されてしまいますので、アップデート開始の情報を得たらHOME画面でMENUボタンから”Turn Wireless Off”にしておいた方が無難です。
Reset to Factory Defaults:ハックを適用してシステム上のファイルが書き替えられている場合、Reset to Factory Defaultsを実行すると文鎮化する可能性があります。工場出荷初期状態のようなニュアンスを受けますが、それはJailbreakしていないKindleが前提であり、ハック適用で変更されたユーザエリア以外のファイルが完全に初期化されるわけではありません。逆に整合のとれた初期化ができないことで文鎮化してしまう可能性があります。
情報漏洩リスク:KindleにはPDA機能が実装されておらず、パスワードロックが可能ですし、今のところ3G回線やWIFIから情報流出しということも聞いたことがありませんので情報漏洩リスクは大きくないと思いますが、ハッキングツールに悪意のあるコードが含まれており、ネットワークを介して格納したデータあるいはWebブラウザで入力した情報などが流出する可能性も有り得ます。
文鎮化したKindleを修理できるか?
Kindle単体で文鎮化を解消することはできませんので外部からアクセスのうえ不具合を特定し修復しなければなりません。外部からアクセスする方法としてシリアル接続があります。しかし、シリアル接続用のケーブルが市販されているわけではなく、USBシリアル・コンバーターや基板などを購入して自作しなければなりませんし、接続できたとしてもコンソールからの操作が求められますので一般ユーザには非常に難易度が高いと言えます。
Kindle JailBreakで一番怖いコト
わたしがKindleをJailBreakして各種ハックを適用する上で一番怖いと思うことは、「完全に初期化(復元)することが出来ない」ということです。iPhoneはいつでも初期状態に復元できますし、Andoroid端末もカスタムROMの差し替えが可能でバックアップ系アプリも充実しています。また、iPhoneにはCydiaというJBアプリを管理する仕組みがあり、Andoroid端末にはマーケットを利用してアプリ全般の管理が可能です。しかしKindleはできません。
さらに、上述のとおり、Reset to Factory DefaultsはJailBreakしてハックが適用されたKindleを完全に初期化する機能ではありません(むしろ文鎮化する可能性があります)。従って、どんなハックのいつのバージョンをインストール/アンインストールしたか、その前後関係も順番も含めてユーザ自身で管理しなければならず、常に文鎮化のリスクがついてまわります。
Kindle JailBreak(Hack)で大事なコト
iPhoneのJailBreakやAndroid端末のroot化の経験がある方は、さほど抵抗を感じないかもしれません。しかし、Kindleは、容易に初期状態に戻せないことを理解しなければなりません。最悪の場合、文鎮化したKindleを修復できず、メーカー保証も受けられなくなります。
そうならないためにはシリアル接続環境は必要だと思います。それが無理であれば、配布されるハックによっては文鎮化防止スクリプトが組み込まれていたり、重複インストールを回避する工夫が施されたものがありますので事前の確認作業が欠かせませんし、自衛の手段が必要になるでしょう。それでも文鎮化リスクからは開放されることはありませんので、もう1台購入する覚悟が必要と思います。
Kindle JailBreak(Hack)する場合の注意点まとめ
- Reset to Factory Defaultsは文鎮化するリスクあり
- Kindleは初期状態に戻せない
- OSアップデート前にハックを全部アンインストールする
- 文鎮化するとシリアル接続以外に修復方法はない
- やるならもう1台購入の覚悟を