電子書籍が盛り上がっています。紀伊國屋書店の電子書籍アプリ『Kinoppy』の再ダウンロード期限があーでもないこーでもないと話題になったり、「出版デジタル機構」がどうもキナ臭いとか。最近はあきらめというか「電子書籍って思ってたほど便利ではない」と割り切れば、あら不思議、気が楽になるという話です。
公正取引委員会の電子書籍に対するスタンス
3月13日、公正取引委員会の独占禁止懇話会にて有識者の方々が「電子書籍を巡る最近の動向」について意見交換を行ったようです。ここで使用された「電子書籍を巡る最近の動向について」という資料が、電子書籍市場の推移や今後の予測、フォーマットや閲覧端末の種類等、統計を交えながらこれまでの国内の電子書籍界隈の歴史を振り返りつつ、どんな課題があるのかをコンパクトにまとめたわかりやすい資料だと思います。
公正取引委員会:平成24年3月21日付 事務総長定例会見記録
新規参入が阻害されたり,消費者が不利益を受けたりすることのないように留意してほしいですとか,プラットフォーム事業者,これは配信ストアのことですが,契約条件を一方的に決めることができるような力を持ち得る …
3月21日、事務総長定例会見で懇話会の内容が公開されています。なかなか興味深い意見が出されたようですが、ここで重要なのは公正取引委員会のスタンスが明確に示された、ということではないでしょうか。
日本だけが独自の規格を採用することによって孤立することのないよう,欧米の動きを注視していく必要がある
お!と思う一方で、
EUとアメリカの競争当局では,昨年,出版各社やアップルとの間で競争制限的な協定が行われている疑いで調査を行っている
ので
公正取引委員会としては,現在,日本の電子書籍市場は,いわば黎明期であるため,市場における公正な競争及びイコールフッティングの確保が重要であり,電子書籍市場をゆがめるような行為がないか注視していくことが必要である
個人的には、国内の電子書籍の市場規模が「黎明期」の現時点でこういうスタンスを明確にしたことが意外でした。
欧米各国の規制当局が調査に乗り出したような事案を警戒して先手を打たせたのか、公正取引委員会へ「優越的地位の濫用」に関する相談や報告があったやなしや。国内勢のロビー活動の賜でありましょう。
出版デジタル機構
4月2日に設立される「出版デジタル機構」も話題のようです。この機構に賛同する出版社は274社で、社団法人 日本書籍出版協会は出版社459社で構成されているそうなので、(完全に一致している不明ですが)出版社の約6割が賛同していることになります。電子書籍への変換作業や経済産業省から補助金の手続きを請け負うらしいので賛同する会社も多いのでしょう。
本紹姉妹が解説:話題の「出版デジタル機構」って何? – 電子書籍情報が満載! eBook USER
この記事を読んでみたときの自分の感想。
コレってApple、Amazon対策? RT 本紹姉妹が解説:話題の「出版デジタル機構」って何? – 電子書籍情報が満載! eBook USER ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles…
— hondamarlboroさん (@hondamarlboro) 3月 29, 2012
公取の懇話会では日本はまだそういう段階にないと言っていたけど、そういう段階になったら既に見事な参入障壁が出来上がってるということなのかな。国策として。
— hondamarlboroさん (@hondamarlboro) 3月 29, 2012
公正取引委員会の独占禁止懇話会で示されたような「公正な競争」や「イコールフィッティングの確保」とどうも相容れない気がして釈然としません。こういうことが裏側で起こっていたとすると、「日本版キンドルの発売」「角川グループと米Amazonが配信契約を締結」のような米Amazonの国内展開開始への盛り上がりも当事者不在のままウワサだけが先行していたのか、出版社側に待ったがかかったのか。
「出版デジタル機構」について電子出版系事業者側からの貴重な意見が紹介されていました。
電子出版系事業者の立場から出版デジタル機構を考える – 電子書籍情報が満載! eBook USER
バカだなんだと言われる出版側にもよりよいモノに仕上げたいと努力されている方もいらっしゃるわけで、なるほど一気に推進するにはこうした強引な方法も必要なのかもと思ったり。
電子書籍は格安レンタルにしてください
電子書籍は、普通に本が読みたいだけなのに、なんか面倒臭くさいし疲れる。これはおそらく「電子書籍」に期待し過ぎていたから。自然と要求も高くなっていたため。
なら(発想を変えて)不便でいいです。
たとえば、専用端末や登録デバイスでしか読めないとか、機種変更した瞬間に読めなくなったり、書店によってフォーマットが異なるとか、全然構わない。他のデバイスと読んでいるページやブックマークを同期したり、検索する機能もいらない。贅沢な機能は一切不要です。
「もしドラ」の著者が所有権云々と主張されていたことを思い出しますが、そうであれば一定時間経過したら返却するのでレンタルCD/DVDのように安くしてください。借りたものはお返しします。iTunesの映画レンタルの「レンタル開始後1ヶ月以内にダウンロードし、視聴開始から48時間以内」を参考にしてはいかがでしょう。読み切れなければ何度もレンタルしますからガンガンに制限してくださいい。今買ったものが何十年後にも利用できる保証もないわけだし印刷書籍と同じと考える方がむしろ無理がある。
レンタルCD/DVDで間違って同じものを借りることありますし、借りる際に教えてくれないレジの店員が悪い(電子書籍で言えば本棚機能)なんて思わず、むしろ「あれ、すでに観た映画。俺ってバカ」と反省するわけです。本当によいと思った本は紙も買うし。
所有ではなくレンタルです。格安でお願いしますよ。