HTC Desire S – スペック重視から一線を画して静かに登場

HTCが今年2月にバルセロナで開催されたMWC2011にて発表した新製品の一つで4月に発売となった「HTC Desire S」を購入しました。今年のハイエンド・スマートフォンの条件であるデュアルコアCPUや非接触型チップのNFCは搭載されていませんし、話題となるような特長もないため、世界的に人気を博した「HTC Desire」の後継機としては静かな登場となったようです。

昨春に購入した初代Desireでは初期不良でやや苦い経験をしていますが、筐体サイズやデザイン、HTC Sense UI、ディスプレーの美しさなどとても愛着がある端末でしたから、(スペックで見劣りするとはいえ)その後継機に注目していました。

初代Desire(奥)と後継機Desire S(手前)
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デザイン
ブラックを基調としたアルミユニボディとシルバーのボタン類が高級感を演出しています。最近は大型化するスマートフォンですが、むしろ高さが4mm小さく、重量は5g程度軽くなっていることに加え、バックパネルのアールが若干強くなっため手のひらに心地よく、そしてしっかりと収まるホールド性が安心感をもたらしてくれます。

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Desire S(左)と初代Desire(右)の裏面
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上部は初代Desireと大きく変更が加えられています。まず受話口が大きく開口され、右側にフロントカメラ(130万画素)が追加されました。通知LEDは受話口の右端下あたりに位置しています。

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それから個人的には非常に嬉しい変更ですが、初代Desireからヘッドセットコネクタとパワー/スリープボタンの位置が入れ替わりました。これでiPhoneと同じ位置関係になりましたので押し間違えることがなくなりました。

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Desire Sではボディ前面の下側にあった光学トラックボールや両隣に配置されていた物理キーは廃止されましたが、ホーム、メニュー、戻る、検索の各キーの並び順は初代Desireと同じなので違和感はありません。タッチスクリーンは保護フィルムを貼るユーザにはあまり関係ありませんが、わたしのように何も貼らないユーザからは、以前よりも指に吸い付き、ヌルヌル動くようになってフリック入力しやすくなりました。また指紋や油脂が付きにくくiPhoneの耐指紋性撥油コーティングのような感じです。

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初代Desireではボディ下部中央にあったmicroUSBコネクタが側面に移動しました。そのためボディ下部から裏側にかけてのアールをより強くすることが出来たのだと思います。グリップしたときのホールド感が増して、手の腹にあたる部分が以前よりもソフトになっています。

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バッテリーやSIMカード、microSDカードの取り出しは裏側下部のパネルを下にスライドさせて引き出すようになっており、初代Desireのようにバックパネル全面を取り外す手間がなくなりました。

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スクリーンショット
HTC Sense UIを気に入っている方は多いのではないでしょうか。初代Desire向けに公式Android2.2までしかリリースされていないようですが、Desire SにはAndroid2.3.3 with HTC Sense 2.1が実装されています。先日、ソフトバンクのDesire HD(001HT)にAndroid2.3 with HTC Sense 2.1の提供が開始され、HTC Senseのバージョンは同じ2.1なのでUIはDHDと同じだと思います(DHDが手元にないのでわかりませんが)。

このホーム画面を見ると「あぁ、HTCだ」と一目でわかります
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アプリケーション一覧にタブが追加されました。「よく使うアイテム」「ダウンロード済み」に切り替えると目的のアプリを探すのが楽になります。また右側にスクロールバーが設置されて一覧全体のなかでどの辺の場所をスクロールしているのか、そして縦スクロールがページングされるようになりましたのでより早い移動が可能になりました。

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付属のmicroSDカードは8GB。ROMは1.1GBとなり、初代Desireの512MBの2倍に増えています。メモリ不足が頻発して苦労した初代Desireでしたが、Desire Sでは初期状態で1GB以上の空きが確保されています。FroyoからアプリをSDカードに保存することが出来るようになりましたし、Desire Sではメモリ不足に悩まされることもなさそうです。

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初期状態のソフトウェア情報です。OSはGingerbread(Android2.3.3)です。

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カメラを起動して設定パネルを開いたところです。設定パネルを上下にフリックしてメニューを移動できます。セルフタイマー、露出、コントラスト、彩度、ホワイトバランス、解像度、ISO、レビュー時間、ワイドスクリーン、ジオタグ、自動エンハンス、オートフォーカス、顔検出、シャッターサウンド、グリッドを細かく設定可能です。アウトカメラとインカメラの切り替えアイコンがあります。リアカメラは500万画素、インカメラは130万画素、動画は720p HDです。

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一応、ベンチマークテストの結果です。

Quadrant Standard
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Neocore
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AnTutu Benchmark
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Desire Sを初代Desire、Desire HDと主な項目の主な仕様を比較してみました。

項目
Desire S
Desire
Desire HD
59.8mm
60mm
68mm
厚さ
11.63mm
11.9mm
11.8mm
高さ
115mm
119mm
123mm
重さ
130g
135g
164g
CPU
Qualcomm Snapdragon MSM8255 1GHz
Qualcomm Snapdragon QSD8250 1GHz
Qualcomm Snapdragon MSM8255 1GHz
ROM
1.1GB
512MB
1.5GB
RAM
768MB
576MB
768MB
ディスプレイ
3.7インチ
480×800
TFT
3.7インチ
480×800
有機EL
4.3インチ
480×800
TFT
カメラ
768MB
576MB
768MB
連続通話時間
435分
390分
320分
連続待受時間
455時間
360時間
490時間
バッテリー
1,450mAh
1,400mAh
1,230mAh

仕様を比較すると分かりやすくなります。大きさは初代Desireそのままに、DesireHDのパワフルさを実現し、タッチスクリーン、バッテリー容量等の改善とHSDPA14.4 Mbps/HSUPA5.76Mbpsまで対応したり、720pHD録画が可能になったり、Wi-Fi802.11nやインカメラの追加などが積み重ねられ、アルミユニボディに包まれた美しい端末に仕上がっています。かつバッテリー容量を上げて連続通話・待受時間が大幅に向上しました。

最近はプロセッサーのスペック重視、ディスプレイの大型化、電子マネーの非接触型ICチップ搭載等がトレンドのようですが、Desire Sはそうした流れと一線を画して着実な進化を遂げたマシンと言えるのかも知れません。