いよいよ次世代Kindleについての詳細な情報が出てきました。Kindleの発売時期はKindle2が一昨年の9月、昨年は8月でしたから、次世代機について今年もそろそろと思っていたところです。名称は”Amazon Kindle Tablet”のようですが、まだわかりませんので次世代Kindleと呼ぶことにします。
Amazon Kindle
Kindleは米国で爆発的に売り上げを伸ばしている電子書籍リーダーです。日本からは米アマゾンで直接購入が可能ではあるものの、日本語コンテンツがないために日本国内での知名度はあまり高くありません。米国内の状況は電子書籍の販売と同時に印刷版書籍も拡大しており、米アマゾンの好調決算を牽引するほどにまで成長しています。電子書籍が印刷版書籍を既に上回っているというから驚きです。一方、日本国内ではフォーマットをどれにするかを巡ってなんとか連合が乱立している状態・・・
Kindleの特長はE-inkで紙に印字したのと同じように表示されるので見やすくバックライトではないので疲れにくい、またバッテリー駆動が1ヶ月程度もちます。書籍購入にかかる3G回線費用は全世界中で無料です。そして薄くて軽いので持ち運びやすく、かつ低価格です。さらに、Kindle Storeで購入した電子書籍はKindle本体のみならず、リーダーアプリをiPhone、Android、BlackBerry、Windows、Macといったあらゆるプラットフォームに対応させていますので、Whispernet経由でいつでもどこでも続きを読むことが可能です。
不満があるとすれば、残念ながらKindle3は日本語表示は可能(Kindle2は不可)なのに、Kindle Storeに日本語コンテンツがないこと。それから、Kindle本体のハード自体のスペックは高くないので、ページ切り替えやメニュー移動時のE-ink表示スピードは瞬時に反応しませんし、全体的にサクサク感はありません。
もっとも、スペックについてはKindleがテクノロジーを追究したものではなくコンテンツ提供の一媒体であり、他のデバイスと補完し合って完成されるので、むしろ用途を電子書籍リーダーに絞ることでスペック競争とは一線を画して低価格に抑え、消費者へ訴求できています。日本では購入できませんが、Kindleを広告媒体として活用することでさらに低価格に抑えたモデルも登場しています。
次世代Kindleへの期待
以前からOSはAndroidをベースとしたフルカラーでデュアルコア以上のタブレットという噂がありましたが、昨日、TechCrunchのプロトタイプの実機レポートでかなり詳細な内容が報告されました。
やはり、ハード自体は低価格に抑えつつ、Amazonのコンテンツ提供を目的としたハードに仕上げてきたという印象を受けました。普通のAndroidタブレット端末であれば既にAmazonから提供されるKindleアプリがあるので、iPadのようなタブレット購入者はAmazonからさらにもう1台タブレット端末を購入するインセンティブは働きませんし、Amazonがどのようなハードを出してくるのか非常に興味がありました。
まずは大きさ。7インチモデルと10インチモデルがありますが、7インチモデルが10月にUS$250程度でリリースされるようです。現在のタブレット端末は10インチ前後が主流で持ち運びには不適なので、いつでも気軽に取り出せる電子書籍リーダーとしての7インチは正解だと思います。レポートには重量の記載がありませんでしたが、さすがにKindle3(約250g)並みは難しいでしょうけど、シャープのGALAPAGOS(389g)以下には抑えてもらいたいです。
そしてソフトウェアとハードウェア。OSはAndroid2.2をベースとした完全にAmazon仕様で、AndroidマーケットやGoogle系アプリはまったく見当たらないようです。ハードのスペックもフルカラーのマルチタッチスクリーンですが2本指のマルチタッチだったり、CPUはシングルコアだったり、ROMが6GBしかないのにmicroSDカードのスロットがないと。普通のタブレット端末を期待している層からすると拍子抜けですが、Amazonコンテンツを提供するために機能をしぼり、小型で軽量かつ低価格に抑えていると考えれば至極当然のことに感じます。
現行Kindleで提供できるのは電子書籍だけですが、次世代KindleにはAmazonが提供するAmazon Mobile、Amazon Appstore、Cloud Player、Instant Video等のコンテンツが追加されます。機能は限定されていますが、US$250(約2万円)という価格は、iPad2(16GB-WIFIで44,800円)の半値以下ですから、タブレット端末を持っていない層はもちろん、既にタブレット端末を持っているユーザに対しても7インチで差別化されていて低価格なら追加購入としても検討しやすい設定です。
回線については10月リリースされるモデルはWIFIのみで3Gモデルはない様子。Whispernetを使って書籍購入やブックマークの同期等に限定(一部Webブラウザも試験的に認められていますが)されるものの世界中で3G回線を無料(AT&T国際ローミングでユーザ負担ゼロ)で使用できるのはKindleの大きな魅力でした。Cloud PlayerやInstatnt Videoも含めると速度や帯域の問題もあり難しいであろうことは理解できますが、WIFI環境がない場合にWhispernet経由で他デバイス間との同期がとれなくなりますので、持ち運びしやすいサイズにしておきながら不便になるような気がして残念です。
次世代Kindleへの不安
期待で胸が膨らむ一方、日本で使用することを想定するといくつか不安があります。
まず、購入可能なのかどうかということ。KindleはAmazon.co.jpでは購入できませんので、米Amazon.comで注文します(全て英語)。Kindle3は日本を含めて海外発送可能ですが、次世代KindleのコンテンツにはCloud PlayerやInstatn Video、Amazon Appstoreのような北米でしか解放されていないコンテンツやサービスが含まれているため、米国以外への発送が可能かどうか気になります。たとえば広告表示付きの代わりに割引する”Kindle3 with Special Offers”モデルは発送を米国以外へ指定することができないようになっています。
そして日本語フォントのカスタマイズです。AndroidベースのためCKJフォントはインストールされているはずですが、日本語フォントがないと一部不自然な字体で表示されてしまいます。また、言語環境を日本語にする”More Locale2″や日本語入力するATOKのようなIMEアプリは、Androidマーケットにはありますが、Amazon Appstore for Androidにはラインナップされていないため、インストールできないのではないかと。
Kindle2では日本語表示すらままならない状態であったことを考えれば贅沢な悩みかもしれません。
日本語版キンドルへの可能性
日本語版キンドルがリリースされる可能性はないのでしょうか?昨年からやっと日本国内でも電子出版ビジネスの動きが本格化してきました。出版社、印刷会社、メーカ、キャリアの各連合チームがいくつも立ち上がり、それぞれが年内に間に合わせたかのようにいろいろなハードやサービスが始まりました。当然、Amazonにも期待され(恐れられ?)ていたわけですが、オフィシャルには何も語られることはなく、今日に至っています。
火のない所に煙は立たないのか、周囲が煙を立てているだけなのか、ウワサはありました。ユーザとしてはなかなか進まない電子書籍マーケットの確立に苛立ちを覚えるわけで、こうしたノウハウのある黒船Amazonに期待するのも無理からぬこと。日本の出版社などのメインプレーヤーも米Amazon(またはアマゾンジャパン)への接触は図っていると考えるのが自然ですし将来的に実現はするのでしょうけど、是非そのスピードを加速させてもらいたいものです。
日本で解決しなければならないのは電子書籍だけでなく、音楽や動画という新たなテーマもあるため、日本語版キンドルが次世代Kindleが提供する予定のコンテンツ・サービスをフルカバーするのはまだまだ先の話でしょうけど。まずは次世代Kindleのさらなるリーク情報を待ちましょう。やっと出てきた具体的な情報に興奮気味です。